”Hello!Days”第3話『幼馴染』

入学式とHRが終わり下校する時間となった。
俺と光井は昇降口で靴を履き替えながら、入学式での出来事を話しいていた。

「ふぅ、無駄に疲れた気がする」
「お疲れさん古羽くん」
「お前本当にそう思ってるのか?」
「もちろん。おもろい事は大好きやし」
「ぜってぇ楽しんでるだけだ……」

だが愚痴をこぼす俺を尻目に、光井はまったく他人事のようにケラケラ笑ってるだけ。
それにしても……

「さっきから物凄い視線を感じるんだが……」
「そりゃそうやろ。入学式の真っ最中に生徒会長に名指しでライバル宣言され、そしてその本人は女子のボディブロー一発でノックアウト。ほんで今度は美人の副会長にも名指しされ、今度は副会長がマイクでオデコを強打してんやから。その矢面に立たされてる人間のことが気にならんかったら好奇心旺盛な高校生として失格やで」
「最後のは俺と無関係だろ。っていうかそんなんで高校生失格になんてならねぇよ」
「アンタ相変わらずアホやなぁ。一連の流れってもんがあるやん。名指し、ボディブローで気絶があったからあの副会長が出てきたんやし」
「そりゃそうだけど」
「まっこれでアンタも一躍有名人やで?ほんま羨ましいわぁ」

どちらかと言えばもっと穏かに普通に高校生活を送りたい俺としては全然嬉しくないんだが……。
だがそんなことをコイツに言った所で言い負かされるのは明らかなので俺は言葉を飲み込んだ。

「ところで小春と恋次は?」
「あぁ新垣さんの所へ行ったで」
「へっ?里沙ねえの所に?何で?」
「ほら、例のボディブロー少女の事を訊きにいったんよ」
「なるほどね、相変わらずこんな時だけ行動の早い連中だぜ」
「しっかし依田尾くんはホンマに年上好きやな。今回振られたら何人目になるんやったっけ?」
「えーと確か五歳の時の幼稚園の先生への初恋から数えて50人目じゃなかったかな?」
「うっわぁよくそこまで振られることが出来るなぁ。でも今回でめでたく記念すべき50人突破かぁ」
「まだ49人目だ!っていうか突破もしてなきゃめでたくもねぇ!」

校門を出た辺りでいつの間にか恋次と小春が戻ってきて俺達の横に並んでいた。

「なんだつまんねぇな。それよりあのボディブロー少女のことは分かったのか?」
「わかったよ~♪あの人は三年B組の紺野あさ美さん。生徒会の会計なんだって。しかも防具量産、蓮根豊作、三食昼寝付で……」
「防具……何て!?小春、もう一回言うてみ?」
「防具量産、蓮根豊作、三食昼寝付……」
「防具屋と農家をやりながら食っちゃ寝しとるんかい!」
「……ひょっとして文武両道、品行方正、才色兼備って言いたいのか?」
「そう!それそれ!」
「全然ちゃうやんか!どんな間違いやねん!」
「でねあの強烈な突きは昔やってた空手のお陰なんだってさ」
「へぇあの大人しそうな外見で空手をねぇ。人は見かけによらないもんだ」
「で、何と!クラスが違うのに里沙姉ちゃんとは友達なんだってさ」
「”何と”は必要ねぇだろ?同じ学校に二年も通ってりゃクラス違っても友達にはなれるだろうし。それに前に同じクラスだった可能性もあるだろ?」
「あっそっか!」
「でもそんなに優秀な人だと、ますます恋次には望みは薄いんじゃないのか?」
「ふっ甘いな、これだからお子様は困るぜ。優秀な人だからこそ、俺みたいな相手に母性本能がくすぐられるんだろうが」
「………それ前に十回ぐらい聞いたことあるぞ?」
「せやね、ほんでその度に玉砕してお亡くなりになっとたもんな」
「恋ちゃん安らかに眠ってね……南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏……」

小春に合わせて俺と光井も合掌をする。

「お前ら…友達の恋を応援をしてやろうって優しさはないのかよ」
「応援はするよ。でも応援したからって上手くいくかどうかは別な話しだしな」
「それに今から振られる前提で話し進めとけば、後でショックも小さいやろ?」
「で、逆に上手くいった時の喜びは格別ってわけだ」
「う~んウチらって何て友達思いなんやろなぁ」
「……ありがとう、お前らの優しさには涙が出そうだよ」

全然感謝の気持ちのこもってないお礼を言う恋次。
その時小春が一歩前へ歩み出て振り返る。

「でもさーこういうのって楽しいよね。高校生になったんだなーって感じで」
「お、おい危ないから後ろ向きで歩くな!」
「平気だってば、ほら、ぜーんぜん大丈……わっ!」

お約束というかなんというか、案の定小春は都合よく転がっていた少し大きめの石に蹴躓き後ろ向きのまま転びそうになる。
俺は咄嗟に小春の腕を掴み自分の方へと引き寄せた。
その時、小春の髪から漂う甘いシャンプーの香りが鼻をくすぐり、柄にもなく少しドキッとしてしまう。

「ふぅ、セーフ……たくっ、だから危ないって言っただろ!」
「……ご、ごめん、あーびっくりしたぁ」
「びっくりしたのはこっちだっての。今度からはもっと落ち着いて行動するんだぞ?」
「う、うん」

小春は珍しく素直な態度を見せる。
その時光井がニヤニヤしながら俺達を覗き込んだ。

「おんやぁ?お二人さんいつまで抱き合ってはるんですかぁ?」
「へっ?」

光井に言われて初めてその事に気付き、慌てて小春の体を引き離す。
俺達の身長差は殆んどないのだが、小春が前かがみの姿勢になってるため、結果的にすっぽりと俺の胸の中に小春の顔が納まる形となっていたのだ。

「ち、違う!これは不可抗力ってやつで……」
「別に恥かしがることないやん。遠慮なく抱き合ってってかまへんよ?」
「だ、だから違うって!」
「なぁ光井、何か俺達お邪魔みたいだし先に帰ろうぜ?」
「そやね~♪ほなさいなら♪」
「また明日なぁ♪」
「お、おい待てって………」

二人は俺達に背を向けたままヒラヒラと手を振りながらその場を後にする。

「たくっ、アイツら……何馬鹿なこと言ってんだか…なぁ?」
「何が?」
「何がって、お前意味全然分かってねーだろ?」
「うん、ぜーんぜん分かんない」
「はぁ、さいですか、もういいです……とにかく俺達も帰ろうぜ」
「うん、そうだね」

小春はそう言いながら足を一歩前へ踏み出す。
だが直ぐにバランスを崩し、右足を押さえながらしゃがみ込んだ。

「いったぁ…」
「おい、もしかしてさっきので足痛めたのか?」
「あははは、そうみたい。でもきっと全然大丈夫だよ」
「何言ってんだ!とにかく足見せてみろ」
「へ、平気だってば…」

俺は小春の言葉を無視して痛めたと思われる右の足首に軽く触ってみる。

「いたっ!」
「ちょっと腫れてるな。軽い捻挫だとは思うけど、どうする?一応病院に行っとくか?」
「う、ううん、そこまでしなくても大丈夫」
「まぁそうだな、あんまり大げさにしてもなんだし。じゃあほれ…」

俺はしゃがんだままの体制で小春に背を向けた。
すると小春は意味が分からないといった感じで首を傾げる。

「えっ?」
「おんぶだよ、お・ん・ぶ!その足じゃ歩けないだろ」
「えーーー!で、でも小春こう見えて結構重いんだよ?だからちょっと痛いけど自分で歩くってば!」
「バカタレ!無理して悪化したら大変だろーが」
「でも人が見てて恥かしいし……」
「ほぉ、お前にそんな感情があったとは意外だな」
「むうぅ…今小春のこと馬鹿にしなかった?」
「そんなのどうでも良いから今は大人しくおぶされ!」
「…うぅ…横暴だ……」
「横暴で結構」

まだ納得はいってないんだろうが、小春はやっと素直に言うことに従った。
そして首に手を回された時、先程も感じたシャンプーの香りに再び心臓が軽く跳ねるのを感じた。
(おいおい何緊張してんだ俺?自分から言い出したことだろうが、静まれ、静まれ、静まれ……)
そう心の中で自分に言い聞かせてると耳元で小春が呟く。

「ねぇ雅貴」
「な、何だ?」
「子供の頃もよくこうやっておんぶしてもらったよね」
「そういやそうだったよな………」


………
……



「うわぁ~~~ん!痛いよ~~~!」
「何やってんだよ小春」
「痛いよ~~~!もう歩けないよ~~~!」
「そんなの唾でも付けときゃ治る」
「治んないもぉ~~~ん!」
「だぁ!うるせぇやつだな!」
「こりゃ雅貴の出番だな」
「ちぇっまた俺かよ、しょうがないなぁ。ほら小春、おんぶしてやる」
「わぁ~い!やったぁ~!」
「何だよ、全然元気じゃないか」
「ううん、小春ね足が痛くて歩けないの!それにこれは、えーと何だっけ?……そうだ!”せんたいれきにん”だから雅貴は小春をおんぶしなくちゃ駄目なの!里沙姉ちゃんが言ってたの!」
「戦隊歴任?」
「ばーか、それを言うなら”連帯責任”だ。っていうか普段の悪戯とは違うんだからこの場での使い方としても間違ってる」
「そうなの恋ちゃん?」
「俺に聞くなよ」
「はぁ、お前らアホ過ぎる……」
「まぁいいや、ほら雅貴、おんぶおんぶ!」
「はいはい分かったよ。その代りちゃんと大人しくしてるんだぞ?お前いつも騒ぐんだもんな」
「は~い♪」



……
………



「小春と恋ちゃんと雅貴と一緒に探検ごっこをして、いっつも小春が転んで膝を擦りむいちゃってさ」
「そうそう、その度に小春が『もー歩けなーい!おんぶー!』って泣き喚いてたよなぁ」
「で、小春をおんぶする係はいっつも雅貴だった」
「あの頃は恋次の奴背が小さかったからなぁ、ってまぁ今も小春より小さいんだけどよ」
「ふふふっ。でも小春は嬉しかったんだよ?そして雅貴の背中がすっごく頼もしかった」
「そ、そうなのか?改めてそんな風に言われると照れちまうぜ」
「照れるな照れるな。でもね、今も昔と全然変らない、すごく暖かくて、頼もしくて、安心できる、小春だけの……小春専用の大好きな背中なんだ」
「小春お前……」

俺はさっきより更に高まる心臓の鼓動を感じた。

(な、何言ってんだこいつ、これじゃまるで……でも小春は幼馴染でそれ以上でもそれ以下でもなくて……だけど大切な存在なのは確かだし……)

「な~んちゃってね。あはははドキッとしたでしょう?」
「なっ!お、お、お前人をからかってんじゃねー!」
「へっへーんだ、こんな事でドキドキしちゃうなんて、雅貴もまだまだ子供だよね。やーいバーカ!」
「この野郎…って野郎じゃないけど、下らないことばっかり言ってるとここに置いて帰えるぞ!」
「えーやぁだやぁだ!ごめんごめんってば、冗談だから置いてかないでー!」
「だったら馬鹿なこと言ってないで大人しくしてろ!」
「はーい♪」

小春はそう言いながら安心しきって俺に体を預け、足をぶらぶらさせながら鼻歌交じりに満面の笑顔を見せる。
こんなとこは昔とちっとも変わってない。

(やれやれ、これが最初はおぶさるのを恥かしがってたやつと本当に同一人物かね、どこまで子供なんだか……)

そんなことを心の中で呟いてはみたが、俺自身も先程感じた胸の高まりがいつの間にか綺麗さっぱり消えてることに気付き、思わず吹き出してしまう。

「あーまた一人で笑ってる!やっぱ気持ち悪ーい!」
「また?あぁ今朝のことか」
「分かった!小春をおんぶしてエッチな気持ちになってるんだー!言っとくけどお尻触ったら叩くからね!」
「さ、触るか!大体そんなどっちが背中だか分かんない体じゃそんな気も起きねーよ!」
「うっ…人が気にしてることをよくもそんなはっきりと……このー!」
「ぐへっ!こ、こら、首を絞めるな!苦しいっての!冗談だよ、冗談だからそんなに怒るな!」
「ふーんだ、雅貴のばーーか」

そんなやり取りさえも心地良く、こいつの幼馴染で良かったなぁと感じる春の出来事だった。







【次回予告】

新しい生活、新しい自分、新しい出会い。
春は色々な新しいものに出会える季節。
そんな中、俺に再び厄介ごとが待ち受けていた。
どうやら、どうあがいてもこの高校生活は色々なことが起こるらしい。

次回、”Hello!Days”第4話、『光井の陰謀……そして就任』

しかし何で俺がよりによって……

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2008年11月04日 03:49
ニャハハ、やっぱり恋次の恋の相手は紺野さんですかー!
50人突破すんじゃねーぞぉ!wwww