”Hello!Days”第2話『ライバル登場?』

朝っぱらからちょっと一騒動ありはしたが、とにかく今日は入学式。
今日から高校生活が始まるのだ。
俺は少しの緊張と大きな期待を胸に、一年A組の教室へ向かう。
教室へ向かう途中に気付いたことだが、何故かこの学校は女子の割合が圧倒的に多いようだ。
少なく見積もっても7:3ってところだろうか?
しかも可愛い子ばかりという、思春期の男子生徒には夢のような学び舎と言える。
まぁ俺は恋愛ごとに疎い、というか殆んど興味が無いだけに、他の男子生徒とは違うのだが。

「あっ来た来た」
「無事に生還したか、我が友よ」

一年A組の教室の前いくと、小春と恋次の二人が俺に気付き近づいてきた。
コイツらよくも俺を見捨てて逃げやがったな……。

「これはこれは友達思いの久住さんと依田尾くんじゃないですか」
「まぁまぁそう言うなって」
「そうだよ、何かムカつくー」
「ムカつくのはこっちだ!たくっ、お前らのせいで酷い目にあったぜ」
「悪かったって、俺達もあんな風になるなんて思いもしなかったんだってば」
「そうそう、不可抗力ってやつ?」
「なーにが不可抗力だ、だったら逃げ出してんじゃねーよ」
「いや、あれは逃げるだろ?」
「だよねぇ、里沙姉ちゃん怒らせると怖いもん」
「………そうなんだよなぁ、里沙ねえ怖いんだよ」

俺はつい十分程前のことを思い出し身震いした。

「背なんか一番ちっちゃいのに迫力満点だよね」
「あぁ、ガキの頃からよく怒られてたよな雅貴は」
「お前もな」
「せっかく可愛いのにあんなに怒ってばかりだといつまでも彼氏できないよね」
「お前が人のこと言えるのか?そんないつまでも子供だと彼氏できないぜ?」
「いーんだもーん!小春そういうのに全然興味ないし」
「たっく本当にガキだぜ」
「お前も小春と一緒で恋とか興味ないじゃないか。ガキな幼馴染二人も持つと苦労するぜ」
「恋ちゃんは昔から恋しまくりだったもんね」
「名は体を表すっていうけど、常に次の恋、次の恋だったもんな。『依田尾恋次の半分は恋で出来てます』ってキャッチフレーズが日本中に知れ渡ってたくらいだし」
「知れ渡ってねーよ!それにしょうがないだろ」
「だな、常に振られまくってたんだから」
「う、うるせー!」
「恋ちゃん可哀想……」
「哀れむな!」
「無謀にも年上ばかり好きになるからだ」
「無謀言うな!」
「恋ちゃん身の程知らず……」
「……お前らは本当に最高の幼馴染だよ。嬉しすぎて泣けてくる」

これは俺達のいつものスタイル。
誰か一人が弄られれば、他の二人が一緒になって弄り倒す。
悪態をつきながらも、決して本気でないのは分かってるから遠慮もしない。
こんな関係が物心付いたころからずっと続いている。
言わば体の一部といった感じだ。
そして、そんな俺達を上手く操縦するのが里沙ねえってわけだ。

「おっ!今年もアホ三人組が揃い踏みやね」

突然の失礼な一言に振り返ると、そこにはよく見知った顔があった。

「こら光井、誰がアホ三人組だ。コイツらと一括りにするな」
「愛佳おはよー」
「おっす光井」
「おはよう、小春、依田尾くん。古羽くんもおはよう」
「お、おはよう……、俺の意見はスルーかよ……」

この妙に明るい関西弁女は光井愛佳。
中学一年の時からの知り合いで、小春にとっては大の親友だ。
先程クラス分けの掲示板で確認してたから知ってたが、コイツも同じクラスなのだ。
ちなみに光井とも知り合ってからはずっと同じクラスで、プチ腐れ縁ってって感じだ。

「今年も同じクラスだね愛佳」
「そやね、今年もよろしくな」
「それにしても毎年同じ顔ぶればかりだと飽きてくるよな。どっかに可愛い子がいないかねぇ?」
「ここにおるやん可愛い子が」
「いないかなぁ?」
「むぅ…失礼なやっちゃな。まっ依田尾くんは振られまくりのくせに無謀にも年上好な、身の程知らずで可哀想な人やしね」
「ぷっ…あはははは」
「れ、恋次、やっぱ誰の目から見ても明らかなようだぞ、くっくっくっ……」
「………」
「へっ?なに?」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする光井。
そして恋次はついさっき俺と小春が言ったことを繋げて復唱されたことに苦笑いするのだった。


     ◇


「新入生諸君、入学おめでとう。私が生徒会長の江武丸史章だ」

入学式を行う為に俺達は体育館へとやってきた。
ついさっき校長の長い話が終わり、今度は生徒会長の挨拶が始まった。
初めて会った人間に対してこんな言い方をするのは失礼かもしれないが、生徒会長は一風代わったタイプの人間に見える。
何処がと言われれば返答に困るが、俺の直感がそう訴えてるのだ。

「これから色々なことがあると思うが、高校生活を十分に満喫してもらいたい。だがそれはさて置き、一年A組の古羽雅貴!」
「へっ?」

突然名指しされたことで俺は面を食らう。
そして周りもざわざわと騒がしくなり、多くの視線が俺へと注がれる。

「おい雅貴、お前呼ばてるぞ?」
「アンタ入学早々何したんの?」
「何もしてねーよ」
「嘘だ!雅貴のことだから絶対に何かしたんだ!」
「だからしてねーってば、っていうか何でそんなに信用がないんだよ」

三人に色々言われるが、俺には入学式の最中に名指しされるようなことをした覚えは全くない。
っていうか仮に何かしでかしたとしても、式の最中に名指しなんて普通はありえないことだ。
一体何だっていうんだ、あの生徒会長は。

「静粛にしたまえ!……いきなり名指しして済まなかったが、君には一言言っておかねばならない。私と勝負したまえ!!」
「…………はいっ!?」

想像の範疇外の言葉に思わず大声で聞き返してしまう。
すると再び俺に大量の視線が注がれたのだった。

「うむ、快く了承してくれたようで私も嬉しいぞ。さすが私がライバルと認めた男だ」
「いやいや違いますってば!今のは了承じゃなくて、疑問を問いかける時の「はい?」です!だいたいにしてライバルって一体何のライバルですか!」
「何!?ならば君は私の挑戦を断ると言うのか?ならば負けを認めて……」

そこまで言いかけた時、一人の女子生徒が壇上に駆け上がると生徒会長に一撃を入れた。
すると生徒会長は気を失い、手足は糸の切れたマリオネットのように垂れ下がる。
そしてそれを引きずりながら女子生徒は「失礼しましたぁ」と苦笑いを浮かべながら壇上から降りていった。
多少不意打ちに近かったが男子を一撃で気絶させるとは、あの女子生徒は只者じゃない。
見た感じは大人しく可愛い感じだったが、人は見かけによらないものだ。
だが驚きと戸惑いを隠せないのは俺達新入生だけで、上級生や教師達は慣れっこのようで呆れ顔を見せていた。

「しっかし何だったんだろうなあの生徒会長は」
「…………」
「恋次?」

俺の問いかけに対して無反応な恋次の顔を覗きこむ。
すると目を見開き頬を僅かに染め、口をパクパク金魚のようにさせていた。
コイツまさか……。

「イイ!今の人イイ!最高にイイ!」
「や、やっぱり……」

思った通り、恋次はたった今生徒会長に一撃を食らわせた女子生徒に一目惚れをしたようだ。
まったく期待を裏切らない男だぜ。

「いやぁ可愛いなぁ♪先輩だよな?二年生?それとも三年生?生徒会の人かな?何て名前かな?お前知らない?」
「俺が知るわけないだろ!」
「まぁそうだよな……はっ!まさかあの生徒会長と付き合ってるんじゃ!?くっそぉよくも俺の麗しの姫を……勝負だ生徒会長め!!」
「お、落ち着けって、まだそうと決まったわけじゃない」
「そうだよな!あんなに可愛い人があんな変な男と付き合うわけないよな!?」
「いや、そこまでは言ってないけど……」

っていうか今のお前も相当変だっての……麗しの姫って、お前はいつの時代の人間だ。
あえて口には出さなかったが、俺は恋次に対する素直な気持ちを心の中で呟いた。

「皆さん静かにしてください。私は副会長の高橋愛です。先程は会長がお見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」

気がつくとさっきとは別な女子生徒が壇上に上がり挨拶をしている。

「既に先程のやり取りで我が校の生徒会長が多少…いえ、かなりの変わり者だというのはお分かりになったと思います」
(ええ、そりゃあもちろん十分すぎる程に)
「しかし、決して悪い人間ではありませんし、我が校を思う気持ちは人一倍ある人間だという事はご理解ください」
(そうなの?まぁただの変人が生徒会長になれるわけはないよな)
「それと、一年A組の古羽雅貴くん、彼の言った事はあまり気にしないでください」
(アナタまで俺を名指しにしますか……まぁこの状況じゃしょうがないか)

俺は多少不本意ながらも軽く頷いてみせた。

「それでは最後に改めて、新入生の皆さん、入学おめでとうございます。これから私達と共に楽しい学園生活を過ごしていきましょう!」

ぺこりと深くお辞儀をして、生徒会副会長の高橋愛は壇上から降りていった。
いや正しくはお辞儀があまりにも深すぎたため、マイクに激しくおでこをぶつけ、体育館中に大きな音が響き渡り、「いったぁ~」と情けない声を漏らし、恥かしそうに顔を真っ赤にして早足で降りたのだった。

「………大丈夫なのか?ここの生徒会は……」
「でも面白そうやん。退屈せんで済みそうやし愛佳はめっちゃ気に入ったわ」
「小春もー!」
「まぁ確かに退屈だけはせずに済みそうだけどな」
「はぁ可愛いなぁ♪名前なんて言うのかなぁ♪」
「………こいつはこいつで既に頭の中に花が咲いてるし」
「まっ”コレ”はしゃあないわ」
「だねぇ」

こうして突然全校生徒の前で名指しされながらも入学式は滞りなく終了した。
いや、生徒会長が挨拶の最中に女子生徒に気絶させられたのだから、滞りはあったってことなのか?
まぁ別に俺にはどうでもいいことだけど。
しかしこの時俺は知らなかった。
この学園生活で、生徒会の人間達と深く関わっていくということを。







【次回予告】

生徒会長のせいで望んでもいないのに学校中の有名人になってしまった俺。
一体あの名指しのライバル宣言は一体何だったのだろうか?
俺は今までと変らない穏かな生活を望んでいたっていうのに……。
だが、そんな俺の気持ちとは裏腹に、少しずつ何かが変り始めていく。

次回、”Hello!Days”第3話、『幼馴染』

甦る、幼き日の思い出……

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