”Hello!Days”第9話、『開幕!大威震七連制覇!!』

「はぁ?里沙ねえを賭けた勝負を持ちかけられた!?」

俺と里沙ねえは教室へ戻り、さっき生徒会室での顛末を恋次達に聞かせていた。


………
……



「いいえ、意味はあるわ」
「里沙ねえ!」
「新垣くん!」
「………」

里沙ねえの登場と同時に、まるでパブロフの犬が如く、里沙ねえに飛びつく会長。
そしてそれを慣れた様子で華麗に避けてみせる里沙ねえ。
会長はそのままの勢いで掃除用具入れへと突っ込んでいった。

「ちょ!会長大丈夫ですか!?」
「あぁ気にしなくて大丈夫。いつものことだから」
「いつものことって言われても……」
「愛ちゃんの言う通りいつものことだから大丈夫だよ。それよりガキさんいらっしゃい」
「こんこんは相変わらずマイペースだねぇ」
「ふっふっふっ、新垣くんわざわざ私に会いに来てくれるとは嬉しいぞ」
「どうやったらあんなポジティブで自分に都合の良い結論に達すると?」
「あれはもう病気だよね」
「まぁウチの会長だし仕方ないよ」

後輩に好き勝手言われて黙ってる会長はある意味大物かもしれない。

「それより雅貴。その勝負受けなさい」
「里沙ねえはそれで良いのか?」
「ええ」
「あのね、さっき江武丸くんがガキさんを賭けてって言ったけど、それはちょっと語弊があってね、正確にはこの勝負に勝ったら今まで通り無駄なアタックを続けてOK、負けたら自重するってことなの」
「なるほど、そういう意味でしたか。で、勝負の内容はどうするんですか?」
「うむ、ただ私と君とで勝負しても面白くない。ここは趣向を凝らして我々と君達で七番勝負といこうじゃないか!」
「七番勝負ってことは四勝した方の勝ちってことですね。ところで我々と君達ってのは?」
「それぞれ代表を七名選抜するという意味だ。もちろんこちらは生徒会全員が参加する」
「生徒会全員っていっても確か全部で四人ですよね?会長と副会長の高橋さん会計の紺野さん、あとは書記の……あれ?そういえば書記の人は?」
「はーーーい!書記は私でーーーす!」
「えっ!?……アナタが書記だったんですか?確か…亀井絵里さんでしたっけ?」
「何か絵里が書記って分かって意外そうな顔してない?」
「いやまぁ、生徒会の人間には見えなかったもので……」
「ちょっとそれって失礼しちゃう!ねぇねぇガキさん、ガキさんの幼馴染すっごい失礼ですよ!」
「まぁアンタの場合仕方ないんじゃないの?」
「えー!ガキさんまで酷いです!」
「ところであとの三人はどうするんですか?」
「そんなんれいなとさゆも参加するに決まってるやろが」
「それがあったから絵里と一緒に君を迎えに行ったんだからね」
「で、残りの一人は私の友達の小川麻琴ちゃんって子にする予定なの」
「どうだ、これで七人だ。私は当然として他の六人も最強の精鋭を集めたから対抗するならば君もそれなりの人物を集めるんだな」
「江武丸くん、私も雅貴のチームの一員として参加するけど良いわね?」
「もちろんだ、君にはその権利がある。勝負は一週間後。それまでに残りの五名を決めておいてくれたまえ」



……
………


「というわけで、こっちも七人代表を決めなくちゃ駄目なんだけどお前達協力してくれないか?」
「そりゃ別に構わないけどさ、向こうは会長以外が女子ばかりなんだろ?俺や利也が入っても良いのか?」
「あぁ男女で明らかな差が出るような勝負は選ばないってことだから男子が入ることに問題は無いらしい」
「そうか、なら気にする必要はないな。里沙ねえの為だ、協力するぜ」
「ありがとう恋次、頼りにしてるわね」
「小春ももちろん協力するよ!里沙姉ちゃんを悪の組織から護るためだもんね」
「いや小春、里沙ねえは別に悪の組織に狙われてるわけじゃないから」
「でも会長だったんでしょ?今朝のスニーカーって」
「だからそれを言うならストーカーだっての」
「でもそれはどうかなぁ?実は私も一瞬思ったんだけど、いくら彼でもそんなことはしないと思うんだよね……」
「まぁ確かにあの会長なら遠くから見るなんてしないで里沙ねえに突進して来るだろうし」
「まぁね……」

里沙ねえは深い溜息を吐いてうなだれる。
しかしそういう意味では会長は信用はあるということなのだろうか?微妙だけど……。

「何かよう分からへんけど愛佳もええですよ。こんなオモローなことに参加せんと悔いが残りますしね」
「お前はただ面白がってるだけだろ」
「そんなことあらへんよ?新垣さんが困ってはるんやから協力するのは当然や」
「ありがとう光井さん。えっと越谷くんだっけ?アナタも協力してくれる?」
「はいもちろんです!一年A組出席番号七番、10月23日生まれ天秤座のA型、越谷利也、新垣さんのためにご協力させて頂きます!!」

利也は里沙ねえの手を握り、目を輝かせながらそう宣言をする。
里沙ねえは当然のように苦笑いを浮かべていた。

「あ、ありがとう……」
「越谷くん…アンタ………」
「一週間前も似た光景見た気がするんだが……」
「俺は初めて見たけど、これを突然見たら雅貴が腹を立てるのも頷ける気がするぜ」
「だろ?まぁこいつは元々こういう奴なんだろな。そのことが理解出来た今、小春と喧嘩してた一週間が物凄く無意味なものに感じてきた……」
「でも納得いかへん!小春や新垣さんには目キラキラ自己紹介モードになったのに、何で愛佳にはこれが無かったんや?」
「「「いや、だって光井だし……」」」

俺と恋次、そして利也までが声を揃えて言った。

「ほぉ…アンタら三人揃って東京湾に沈みたいようやなぁ……」
「「「ゴメンなさい」」」

そして光井の鬼のような形相を見て三人同時に土下座をするのだった。
そんな俺達のやり取りを見て小春は楽しそうな笑顔を見せ、里沙ねえは”コイツらで本当に大丈夫なのだろうか”という顔をしていた。

「ところでさぁ、七人にはまだ一人足りないけどどうするの?」

小春が珍しく核心をつく一言を言った。
そう、それは俺も思っていたことだ。
俺に里沙ねえ、小春、光井、恋次、利也と全員合わせてもまだ六人なのだ。
今回の件は言わば俺達身内の問題だ。
あまり無関係な奴を巻き込みたくないってのが正直な気持ちだが、こいつら以外に親しい人間はいないのが現状だ。

「あぁそれやったらあの子しかおらんやろ」
「愛佳、あの子って誰?」
「古羽くんならピンとくるんやない?」
「……もしかして仙石さんか?」
「そっかぁ、みなみちゃんがいたねー」
「ちょっと待て、こんなことに無関係の仙石さんを巻き込んで迷惑掛けるわけにいかないだろ」
「でも他にいないやろ?新垣さんの友達は全員向こう側に付いてしまったんやし」
「まぁそうなんだけどさ……仕方ない、引き受けてくれるか分かんないけど後で頼んでみるよ」
「きっと大丈夫やて」
「だと良いけどな。さてっと昼休みも残り少ないからさっさと弁当食べてしまいますかね」

生徒会室に拉致されたため、手付かずの弁当は机の上に置きっぱなしにしたままだった。
自分で言うのもなんだが、今日の野菜炒めは格別に上手く出来たのだ。
だからこそ、やっと弁当を食べれる喜びを………得られるはずだったのだが……。

「と、利也、トイレ付き合ってくれないか?」
「お、おお良いぜ!」
「そうや!小春、ウチらも授業の前に行っとこか?」
「そ、そうだね!」
「君達ちょっと待ちなさい」
「ど、どうしたの雅貴?」
「問題です。コレは何でしょう?」
「えーっとお弁当箱?」
「正確に答えてください」
「えーっとね……空のお弁当箱……かな?」
「はい久住さん正解です。それでは依田尾くん、ここに入ってたはずのお弁当は何処に行ってしまったのでしょう?」
「そ、それは物凄い難問だなぁ……み、光井お前なら分かるんじゃないか?」
「愛佳に振らんといてよ!そういうのは越谷くんの担当やろ!」
「いつからだよ!恋次、お前がん問題出されたんだからお前が答えろよ!」
「答えるのは誰でも良いです。これに正解しないと全員バツゲームが決定します」
「あのぉちなみにやけど、正解した時は何かご褒美とかあるんやろか?」
「それは正解した時のお楽しみです。あと10秒以内に答えて下さい。10、9、8……」
「えーっとお弁当は……小春達が……」
「「「「食べちゃいましたーーーー!!!!」」」」
「こら待てテメェら逃げるんじゃねぇ!!人が楽しみにしていた弁当を勝手に食いやがって!!」
「しょうがないじゃん!そこにお弁当があったんだもん!!」
「何処の登山家の理屈だ!!」
「だから愛佳が言うたやろ!食べれる時に食べとかないと人生負け組みやって!」
「うるせぇ!そんな言い訳が通用すると思ってんのか!食べ物の恨みは根深いって言ったのもお前だだろうが!」

教室を飛び出し廊下をひたすら逃げる小春達四人と、それを追いかける俺。
そして一年A組の教室に取り残された里沙ねえは、今後への不安から深い溜息を吐くのだった。


     ◇


あの後、仙石さんに強力を依頼したら二つ返事で引き受けてくれた。
俺ですらあまり気乗りしないというのに、あんなにあっさり引き受けてくれたのは予想外だった。
そしてそのことに対して、何故か光井は勝ち誇った顔をしていた。

「しかしまぁ、とんでもないことになってきたな……里沙ねえを賭けた勝負だなんて……」

放課後、俺は一人学食で遅めの昼食を食べながら溜息を吐いた。
そんな俺の姿に一人の女性が声を掛けてくる。

「どうしたの溜息なんか吐いて」
「亜弥さん……」

この人は学食と購買勤務の松浦亜弥さん。
男子生徒からはアイドル的存在で、彼女目当てで学食を訪れる生徒も多い。
年齢はまだ22歳らしいのだが、何故か年齢詐称疑惑があるのだ。

「何か悩み事?困ってるなら相談に乗るよ?」
「ありがとう亜弥さん。でも大丈夫だよ」
「そっか、まぁ何かあったっらいつでも言ってきてね?アナタ達は私にとって弟や妹みたいな存在なんだから」
「うんそうするよ。ところでさ、放課後だってのに食べさせてもらって良かったの?」
「材料が残ってたからね。余すのもなんだし、こっちとしては売り上げに協力してもらえるんだから問題無し!」
「売り上げって言ってもたかだか350円のうどんだけどね」
「350円を馬鹿にしちゃ駄目だよ。塵も積もれば山となるって諺もあるんだから」
「でも俺殆ど弁当自分で作ってくるから滅多に学食はこれないよ?」
「へぇ自分で弁当作ってるんだ。お母さん作ってくれないの?……あっそうか…ゴメンなさい、余計なこと訊いちゃって……」
「あぁ違う違う、ちゃんと生きてるし離婚したわけでもないからちゃんと家に居るよ。ウチの母親が単に料理を一切出来ないだけ。だからガキの頃から俺と父親が担当してるんだよ。で、その父親も一年前から北海道に単身赴任しててさ、それからはずっと俺が一人でやってるんだ」
「なぁんだそうだったの、余計な気を使って損した。でも凄いね。アナタの年で自炊出来るなんて中々居ないと思うよ」
「まぁね。そのお陰で料理にはちょっと自信があるんだ。言っちゃなんだけど、ここの学食より断然に美味いと思うぜ?」
「へぇ言ってくれるじゃない。じゃあ今度私にお弁当作ってきてよ」
「はははは気が向いたらね」

そんな何気ないやり取りをしていると、先程までの憂鬱な気分が晴れているのに気がついた。

「ありがとう亜弥さん」
「へっ?何が?」
「亜弥さんのお陰で元気が出たから」
「そう?」
「うん、流石男子生徒のアイドル的存在なだけはあるね」
「こら!大人をからかうんじゃないの!」
「大人っていったってまだ22歳でしょ?大して変わらないじゃん……あっでも自称だから実際はもっと上とか?」
「自称じゃありません!っていうか誕生日前だからまだ21歳です!」
「あっそうだったんだ、でもだったらやっぱり殆ど変わらないじゃん」
「アナタから比べれば大人よ。今は学食勤務なんてしてるけど、一応色んな世界を見てきてるんだから」
「へぇ大人って大変なんだね」
「そうよ、だから子供の内にしか出来ないことを沢山経験しておきなさい」
「はぁい」

そうか、里沙ねえを賭けての七本勝負なんてのも、今だから出来ることなんだよな。
大人になってからこんなことやったら馬鹿みたいだし。
よし、勝ち負けはともかく、一生懸命やらせてもらいますか。
そう決意も新たに一週間後の勝負へ向けて気合を入れるのだった。


     ◇


あっという間に一週間が過ぎ、会長との勝負の日が訪れた。
しかし俺は少々勘違いしていた。
勝負と言っても地味なものを想像していたのだが………

「こ、これは流石に予想してへんかったわ」
「はっはっはっ!いよいよ勝負の時が来たな古羽くん!」
「ちょっと会長!何なんですかこの大げさなセットと大観衆は!全校生徒が集まってるじゃないですか!」
「当然だ!我々の世紀の一戦を全校生徒も心待ちにしていたのだからな!」
「それにしたって大げさです!っていうか先生達の許可をちゃんと取ったんですか!?」
「無論だ。先生方もこの勝負を楽しみにしていたんだからな!」
「あのね史章、先生達は既に諦めてるだけでしょ?」
「そうとも言うな!」
「いや…諦めたで許される問題なんですか?」
「まぁ校長先生がこういうお祭り騒ぎ大好きな人だからね。だから史章の暴走が許される部分もあるのよ」
「そ、そうなんですか……」

確かに校長は校長らしからぬ金髪という風体で、しかも年もまだ三十代と若いのだ。
だがこれは自由過ぎる、何でもアリなのかこの学校は……。

「さぁそれではそろそろ開始といこうではないか!新垣くんを賭けた”大威震七連制覇”を!」

そんな何処かで聞いたことがあるような名前の大会が幕を開けた……。







【次回予告】

全校生徒が見守る中、ついに始まった生徒会長との里沙ねえを賭けた戦い。
里沙ねえのためにも負けられない戦いだ。
しかし開始早々、俺達は思わに苦戦を強いられることとなる。
お前ら何やってる!ちゃんと勝負をしろ!

次回、”Hello!Days”第10話、『女の武器』

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