娘。物語~Shared world~ プロローグ『あっという間の日々』

あっという間だった。
私は仲間達から少し離れた場所の椅子に座り今までの事を思い返す。
私の生きてきた人生を考えれば、あの日々は決して短いものではない。
でも、今日この日を迎え、あの日々を振り返ればあっという間に過ぎ去ってきたように感じる。
苦しいことや辛いことも沢山あった。
でもそれ以上に嬉しいこと、楽しいことの方が多くあった。

私と同年代で、これほど素敵な日々を過ごした人はそうはいないんじゃないだろうか。
そう胸を張って言えるほど、私は自分の人生に誇りをもってる。
でもあの日、あの人に出会わなければ、そう思える私はいなかったかもしれない。

かばんを開け中から一冊の手帳を取り出す。
何の事はない、ただのプリクラ手帳だ。
そこには仲間達と撮った沢山のプリクラが貼られている。
年齢を重ねるにつれ撮る回数は減っていったが、それでもこれ以上ないくらいページが継ぎ足されかなり分厚くなっている。
その中の一番最後のページに、あの人と一度だけ撮ったプリクラが1枚貼られていた。
そこに写っている私は満面の笑みを浮かべ、私の隣に遠慮がちに直立しているあの人は、緊張しているのか笑顔が少し引きつっている。

「懐かしいなぁ」

思わず声に出していた。
だがその私の呟きは、いつものように大声で騒いでいる仲間の耳には届かなかったようだ。

その時マナーモードに設定してあった私の携帯が震えた。
画面には新着メールを知らせる表示。
私はすぐにメールを開き読んでみる。
だが、そのメールはたった一言、短い文章が書かれているだけだった。

『ちゃんと見てるから頑張れ!』

味も素っ気も無いそんな一言。
他にもっと言う事は無かったのだろうか?
でも、それがいかにもあの人らしくて、私は腹を立てることを忘れ思わず吹き出した。

今度は何人かの仲間の耳に私の声が聞こえたようだ。
何かあったのかと振り返るが、私がそれに気付かない振りをしてると追求することもせず、すぐに会話に戻っていった。

私は再びプリクラ手帳を開く。
あの時の思い出が鮮明に頭に甦る。
私にとって、とても大切なあの人との出会いが……。

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