ハロー荘へようこそ!第8話『フランス帰りの男』

梅雨が明け、ようやく夏がやって来た。
思えば春からかけて色んな事があった。
美貴と大喧嘩したり、あさ美、麻琴、小春の3人は誘拐されたし、愛なんかは記憶喪失にもなった。
大変だったけど、あれも今にして思えば良い思い出・・・・・・・・なのか?
そんな事を考えながら俺は一人街を歩く。
管理人業から解放され、ほっと一息付けるこの時間が結構好きだ。
まあ管理人といっても、普段大したことしてる訳じゃないけども。

「おお!根良じゃないか!!」

その時不意に声をかけられた。
声のした方を向くと一人の男が俺の方へ走ってくる。
誰だっけアイツ?

「久しぶりだな、高校卒業以来12年近くぶりかぁ」
「・・・・・・・」
「どうしたんだよ、久しぶりに会ったってのにテンション低いじゃないか」
「・・・・・・・あのぉ、誰だっけ?」
「なにぃ!誰だと!?うっわぁ~ひっでぇ!!悲しいぜぇ俺はよぉ」
「あっ!」

異常に高いテンションを見た時、頭の中に一人の男の名前が思い浮かんだ。
それは高校の時、俺とよくつるんでいた悪友の事だ。

「柿山か?もしかして」
「もしかしなくてもそうだっつぅの!親友の事を忘れやがってこの野郎!」
「悪い悪い、でも親友っつったって、卒業以来一度も会ってないから仕方ないって」
「俺は覚えてたぜ、一目見て分かったからな、薄情なお前とは違うんだよ」

柿山はそう言って少し得意げな顔をする。
くっそ~偉そうにしやがって、まあ昔からこういう奴だよこいつは。
こいつの名前は柿山雄太、俺の高校時代の親友だ。

「それよりお前何で日本にいるんだ?フランスに居たはずじゃ?」
「帰って来たんだよ先週な」
「そうか~、んで修行の成果は?」
「ふっふ~ん実は、この近くに自分の店を出すことになってな」
「マジでか!?凄いじゃないか!!」
「せんきゅ~」

実は柿山は高校卒業と同時に、フランスへパン職人になる為留学したのだ。
まあはっきりいって、パン職人というキャラではないが、自分の店を出すまでになるとは大したものだ。

「オープンしたら招待するよ、まだあのバカでかい家に住んでるんだろ?」
「ああ、じゃあ皆連れて行くよ」
「皆って・・・まさかお前結婚したのか!?」
「ちゃうちゃう、うちの寮の住人達って事だよ」
「寮?住人?分かるように説明しろって」
「ああ、実はな・・・・」

俺は柿山に全ての経緯を簡潔に説明した。
俺の家が8年前に女子寮となった事、そして春から俺がそこの管理人となった事を。

「・・・・っとまあ、こういうわけなんだよ」
「・・・・・」
「柿山?」
「紹介しろ!女の子紹介しろ!ズルイぞ!お前ばかり!!」
「いや、ズルイと言われてもだな・・・」
「ズルイだろうが!まさにハーレムじゃないか!男のロマン、ハーレム!う~ん良い響きだぜ」
「あのなぁ、そんな良いモンじゃねぇぞ?それにお前彼女いただろうが」
「そんなん、とっくに別れたっつぅの!アイツ俺のいない隙に浮気しやがったんだ」
「あらぁ可哀想に、でもフランスで浮いた話の1つや2つくらいあっただろ?」
「ふっ、女を経ちパン修行に明け暮れる日々だったぜ・・・」
「要するに全然モテなかったと」
「うるせぇ!人の事言えるのかよ」
「言えないです、ハイ・・・」

くっそ~、でも確かにモテない度合いでいえば俺の方が遥かに上だ。
そりゃあまあ今まで彼女が出来なかったわけじゃないが・・・・・・止めよう、悲しくなってきた。
俺がそんな悲しさに打ちひしがれていると、柿山が俺の肩に腕を回してきた。

「よ~し!じゃあ行くぞ!!」
「行くって何処にだよ」
「うんなもん決まってるだろ!目指せハロー荘!!」
「ちょっとまて、駄目だ、お前みたいなの行けるか!」
「別にいいぜ、場所は知ってるんだから勝手に行くさ」

何が何でも行く気か、でもハーレムとか言ってるような危険な奴連れて行くわけにいかない。
こうなったら・・・・・

「あああ、でもあれだ・・・、はっきりいってウチの住人達ブッサイクばかりだぞ?」
「げっ、そうなのか?」
「言ったろ?そんな良いモンじゃないって」
「ブサイクってどの程度の?」
「そうだなぁ、顔はこ~んな感じでひん曲がってるし、足は桜島大根みたいに太いし」
「うげっ!」
「腹もデブタレみたいにダボダボだし、更にどいつもこいつも根性がねじ曲がっててな」
「最悪じゃねぇか」
「そうそう、だからあんな連中見るに値しないって、止めといた方が懸命だよ」

うううう、皆ゴメン、どんどん口からでまかせが・・・・、でもこれも皆を守る為なんだ!

「なあ、何でそんなのばっかり入居させるわけ?ブス専なのか?」
「いや、そういうわけじゃ・・・・・」
「たまには、そうだな・・・・ほら、あんな可愛い子を入れてみたらどうだ?」
「えっ・・・・げっ!」

柿山が指差す方を見るとそこには、梨華と里沙、2人の姿が。
やべっ、あいつらに気付かれないようにしないと・・・・・。

「んっ?どうした根良、何隠れてるんだ?」
「バカ!デカイ声で俺の名前を呼ぶな!」
「はぁ?」
「だから大声出すなっての」
「あ~武くんだ!」
「本当だ、何してるんですかね?」

げっ、気付かれた・・・・。
俺の姿を見つけた梨華達はこちらに近づいてくる。
どうする、どうやって誤魔化す・・・・・。

「何してんの?怪しいよ」
「お豆、武くんが怪しいのはいつもの事じゃん」
「それもそうですね」
「おい根良、この子達知り合いか?」
「ああ、まあちょっと・・・・」
「ちょっとって何よ!こんな可愛い住人達に対して素っ気無いじゃない」
「石川さん可愛いは余計だから」
「住人?さっきの話の住人か!?全然可愛いじゃねぇか!どこがブサ」
「わぁ~~~~!!!!!!」

俺は大声を出して柿山の声を遮った。
さっき言った事が知られたら、こいつら・・・いや住人全員に殺されてしまう。

「ちょっと、街中で大声出さないでよ、恥かしいな」
「そうね、大の大人が恥かしいわよ」

ほっと一息付く間も無く、柿山が満面の作り笑顔で手招きする。

「・・・・・柿山くん・・・・・何かな?」
「根良くん、ちょっとこっちに」
「は、はい」
「嘘付いたね?俺に会わせたくない理由で」
「は、はい」
「どうしようかなぁ?さっき言ってた事、あの子達に言っちゃおうかなぁ?」
「そ、それだけは勘弁してくれ!」
「勘弁してくれ?」
「・・・・・・・勘弁して下さい、柿山さん」
「じゃあ、どうすれば良いか分かるよなぁ?」

・・・・・・くっ、弱みに付け込みやがって、フランスにいる間に性格悪くなったんじゃないのか?
言う通りにするしかないのか・・・まあ柿山も常識ある大人だから心配する必要も無いかもしれないけど・・・。

「ねえ、武くん」
「わひゃぁ!・・・・に、新垣さんどうしたのかな?」
「新垣さん!?何それ、何でいきなりそんな呼び方なわけ?」
「いやぁ、ちょっと突然だったからさぁ」
「突然って、さっきからずっと居たでしょうが!」
「そ、そうだよね、そうだった、ははははは」
「本当に変だよ、武くん」

里沙が心配そうな表情を見せる。
すると柿山が無言のまま、肘で俺をつっつく。
その顔は早く紹介しろと言っているようだ。

「・・・そうだ紹介するよ、コイツ俺の高校の同級生で、柿山っていうんだ」
「初めまして、柿山雄太です」
「初めまして、新垣里沙です」
「石川梨華です、武くんがいつもお世話になってます」
「・・・・別に世話になんかなってねぇよ」

ボグッ!

「ぐほっ!・・・・・肘が・・・・みぞおちに・・・・し・・・死ぬ・・・・・」
「いやぁ、二人とも可愛いねぇ」
「そんな事無いですよぉ、ねぇ石川さん?」
「そうですよ、可愛いのは私だけで、この子は全然可愛くないですよ」
「えっ?」
「石川さん、それってムカつく」
「やあねぇ冗談よ、里沙だって十分可愛いわよ、私ほどじゃないけどね」
「すみません、この人少し頭がオカシイんです」
「ちょっと、先輩に対して頭がオカシイってどういう事よ!」
「ちょっとした仕返しです」
「キーッ!ムカツク!!」

柿山は二人のやり取りに呆気に取られている。
まあ、俺からすればこんなの日常茶飯事だから何とも思わないのだが。

「・・・・・根良」
「んっ?」
「変わった子達だな・・・・」
「ああ、そうなんだよ、こんなのばっかりなんだウチの寮は、大変なんだよこれでも・・・」
「なんとなく納得・・・・」

一瞬、柿山との友情にヒビが?とも思ったが、R&Rのおかげで大事に至らず済んだようだ。
ちなみにR&Rというのは、名前の頭文字が同じRという事から、二人が勝手にユニット化したのだ。
そういえば、同じRの頭文字のれいなが「れいなもRやから入れるちゃ!」って言ってたっけ・・・・・。
そんなどうでもいい事を思い出してると、R&Rの2人はいつの間にかじゃれ合っていた。

「どっちが可愛いか対決は終わったのか?」
「そんな対決しないって、さゆじゃあるまいし」
「そうだな、さゆみと梨華なら本気でやってそうだ、あと絵里とか」
「でしょう?」
「あのねぇ、私だってもう大人です、さゆ絵里みたいに本気でそんな事しません」
「そうかぁ?どう思う里沙」
「やる、石川さんキモイし」
「そうだな、それに黒いし」
「キモイのも黒いのも関係ないでしょう!」
「って事はキモイのも黒いのも認めるんですか?」
「認めちゃったな」
「も~う!2人して苛めるんだから!泣いちゃうよ?」
「泣けば?」
「泣いて下さい、石川さん」

そんな俺達のやり取りを見ていた柿山が口を開いた。

「あのさぁ、さっきから気になってたんだけど」
「んっ?」
「2人って根良よりだいぶ年下だよな?」
「はい、私は高校2年生で、10月で17歳になります」
「私はピッチピッチの20歳です!」
「石川さん、キモイ」
「あぁ、今のは本気でキモかった・・・」
「だから誰がキモイっていうのよ!」
「石川さんうるさい」
「うぅ・・・本当に泣きたくなってきた・・・」
「そんなことより柿山、気になってたって何が?」
「いや、29歳で管理人のお前に敬語とか使わないんだなぁって思って」
「そういえばそうだな、気にした事無かったけども・・・・ずっとこうだよな?」
「そうだね、まあ紺野とかは未だに敬語だけど」
「ああ、あと小春くらいか、俺に敬語使ってるの」
「そうだね」
「紺野さんってのと小春さんってのも可愛いのか?あとさっき言ってたさゆみさんと絵里さんとか」
「お、お前ってやつは・・・・でも小春だけは止めといた方がいいぞ」
「何で?」
「まだ中学生だから」
「・・・・・・なるほど、確かにそれはヤバイな」

さすがに中学生に手を出して犯罪者になる気はないんだな、安心したぜ。
でも他の3人でも犯罪になるのか、まだ高校生だもんな。
俺がこいつが寮に来るのを拒んだのも、そこに理由がある。
未成年メンバーが全体の3分1以上占めてるから、何か間違いがあったら大変なのだ。

「でもまあ敬語うんぬんの話は、俺達家族みたいなもんだし、いいんじゃね?」
「そうだね、武くんって私からすれば弟みたいなもんだし」
「おい里沙、俺はお前より13歳年上なんだぞ?弟ってのは無理があるだろ」
「だって武くんって結構子供だよ?」
「ああ確かに、それは私も思う」
「ですよね?」
「今度は俺が標的かよ・・・・・・あんまり苛めると泣いちゃうよ?」
「泣けば?」
「そうですね、泣いちゃえ泣いちゃえ!」
「うお~ん!びえ~ん!」
「鼻炎?」
「誰が鼻炎じゃ!」

ビシッ!

「いった~い、本気で突っ込む事ないでしょう?」
「いや、梨華ってそういうキャラだから」
「なにそれ~」
「プッ、ハハハハハハハハハハ」
「!」
「ど、どうした柿山、暑さで頭がおかしくなったのか?」
「いや、ははは、お前ら面白すぎ」
「そうか?」
「やっぱり訂正、お前かなり良い思いしてるよ」
「そんな事ねえって」
「そうだって、だって高校時代のお前は女っ毛の全然無い、悲しい高校生活だったもんな」
「あっやっぱり?」
「余計な事言うな!それと梨華やっぱりってどういう意味だ!」
「そのまんまの意味だよな?」
「そうですね、そのまんまです、ねぇお豆?」
「もちろん、そのまんまですねぇ」
「い、いっとくけど大学の時に付き合った事あるんだからな!」
「そんなの知らねぇよ」
「うん知らないもん」
「んで、その人とはどれくらい付き合ってたの?」
「うっ・・・里沙よそれを訊くのか?」
「うん」
「・・・・だ、大学2年の夏に・・・・に、2週間・・・」
「「はははははははは」」
「笑うな~!!!」

久々の悪友との再会は、何故かこうして俺が笑い者にされる形となった。
俺ってこんなキャラだったっけ?
そんな疑問が頭を過ぎったが、きっとそうだったんだろうと割り切ることにした。
そうでもしなきゃ、あの寮で管理人なんてやっていけないからね。
でも・・・・・・・・。

「「はははははははは」」
「お前ら笑いすぎだ~!!!」

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