ハロー荘へようこそ!第2話『新たな住人、久住小春』

「う~ん~まだかなぁ、早く来ないかなぁ」
「麻琴、少しは落ち着きなよ」
「だってさぁ、楽しみじゃんかぁ」

朝からずっと落ち着きのない住人がいる。
この子の名前は、小川麻琴、高校3年生。
そして私は、同じく高校3年生の紺野あさ美。
同じ時期に入寮してた私達は、それ以来の大親友です。
なぜ、麻琴がこんなにもソワソワしてるかというと、今日新しい住人が来るから。
しかも、麻琴の故郷の新潟県から来るから、尚更みたいで。
でもかれこれ5時間以上もこのテンションって凄い物がある。

「そりゃあ、同郷の子だから嬉しいのは分かるけどさ」
「だよね!あさ美ちゃんも、美貴ちゃんとか、まいちゃんが来た時は嬉しかったでしょ!」
「まあ、でも私が入寮した時には北海道の人結構居たし、安倍さんとか飯田さんとか」
「分かってないなぁ、既に居たのと、新たに来るのとは違うでしょうが!」
「そのとおり!」

不意に、背後から声をかけられました。
振り向くと、露出度の高い、派手な服装の女性が立っています。

「さ、斉藤さん、今日も凄い格好ですね」

この人は斉藤瞳さんといって、23歳のスナック勤めの女性です。
仕事がらか、性格からなのか、とにかく派手である。
本人曰く、セクシー担当だそうだが・・・。

「あら、こんなのジャージみたいなものよ?」
「ははは・・・」

私は笑うしかなかった、これでジャージって・・・・。
じゃあ、この人の派手目ってのはどれ程なんだろう?

「そ、そういえば、斉藤さんも新潟でしたよね」
「そうなのよ、だから、まこっちゃんの気持ちはよく分かるってわけよ」
「ですよねぇ!さっすがセクシー斉藤さん!!」
「もう、本当の事言っちゃだめよぉ、いくら私がセクシーだからって」
「いひひひ」
「・・・・・・」

全然タイプは違うけど、この二人結構馬が合うようだ。
同郷だから何か通じ合う物があるんだろうか?
でもセクシーは全然関係無いと思うんだけど・・・・。

プルルルルルル

その時寮の電話が鳴り、管理人の武さんが出ました。

「はい、ハロー荘です・・・あっ、久住さんでしたか・・・」

どうやら、今日から入寮する子からみたい。
たしか、久住小春ちゃん、中学1年生だったかな?

「はい、はい、分かりました、じゃあそこで待っていて下さい」

待っていろとかって言ってたけど、どうしたんだろう?
そう考えて見ていたら、武さんと不意に目が合った。
彼に対して恋心を抱いてる私は、思わず顔が赤くなる。
その恋は、初めてこの寮に来た時からずっと続いている。
北海道から出てきたばかりだった中2の夏、とても心細かったのを今でもよく覚えてる。
当時彼はまだ管理人ではなかったけど、とても優しく接してくれた。
そんな彼に恋を抱くのには、たいして時間は掛からなかったのだ。
でもきっと彼は私の気持ちなんて全く気付いてない。
この人の鈍さは折り紙付きだから・・・。
少しは気づいてよね・・・・このバカ・・・・。

「何睨んでるんだ?」
「ふえっ?た、武さん!べ、別に睨んでなんかいないですよぉ」

いつの間にか目の前に武さんが立っていた。
あ~ビックリした・・・・。

「そうか?・・・・まあいいや、あのさちょっと頼みがあるんだけど」
「なぁに?武ちゃん」
「瞳さんには言ってないし、ちゃん付けは止めてください」
「なによぉ、つれないわねぇ」
「・・・・・・」

まったく、この人ときたら。
まさか、斉藤さんも武さんの事を・・・。
ライバル出現・・・・でもこの人の場合、これが素っぽいからなぁ。

「ところで武さん、頼みって何ですか?」
「あぁ、そうそう、今日からここへ入る、久住さんの事なんだけど」
「久住さんがどうかしたんですか?」
「駅まで着いたみたいなんだけど、ここまでの道が分からないみたいなんだ」
「まあ、結構複雑だからね」

麻琴が答える。

「それで、悪いんだけど、迎えに行ってやってくれないか?」
「いいですよ」

私は快く了承しました。
ここで少しでもアピールしとかないと!

「ありがとう、俺が行ければいいんだけど、歓迎会の準備あるしさ」
「私も迎えに行く!」
「私もいいわよ」
「ああ麻琴も一緒に行ってくれ、でも瞳さんはいいですから」
「何でよ?」

自分だけ外された事に、斉藤さんはひどくご立腹のようだ。
すると、武さんは慌ててフォローを入れます。

「ひ、瞳さんは・・・ほら歓迎会の準備の方を手伝ってくださいよ。
 店でもやってるんでしょ?飾り付けとか瞳さんのセンスでバ~ンと!」
「な~んだ、そういう事ね、分かったわ、思いっきり派手にいくわよ!」
「ははは・・・・・」

今のは多分嘘だ。
その予想通り、後で武さんが教えてくれた・・・。
『田舎から出て来たばかりの中学生に、瞳さんは刺激が強すぎる』と・・・。
失礼ながら、私は思いっきり納得してしまいました。
札幌出身の私ですら、最初に斉藤さんを見た時は衝撃的だったから。
新潟の片田舎出身なら、尚更でしょう。

「じゃあ武さん、行って来ます」
「じゃあね~武くん!」
「おお、頼んだぞ二人とも」

この時、麻琴程じゃないけど、私も新しい住人に会える事にワクワクしていました。
だからこの後、ちょっとした事件に巻き込まれるなんて夢にも思ってなかったのです。

   ◇

私と麻琴は、新しい住人の、久住小春ちゃんを迎えに駅まで来ました。
え~っと、どこにいるのかなぁ、小春ちゃんは・・・・・あっ!

「ねぇ麻琴、小春ちゃんてどんな子?」
「あっそういえば・・・聞いてないね・・・」

まぬけな事に、小春ちゃんの容姿を聞くのをすっかり忘れていた。
まあ、それを言い忘れた武さんも、そうとうなドジだと思うけど・・・。
でも、そんなドジな武さんも好き・・・って今はそんな事言ってる場合じゃないって!
私かそんな軽く悶えていると、麻琴が私のポンポンと叩いてきました。

「ねぇねぇあさ美ちゃん、あれ何やってるんだろう?」
「えっ?」

麻琴が指差す方を見ると、中学生くらいの女の子が、数人の男の人と何か言い合ってます。

「俺らと一緒に来いよ、お嬢ちゃん」
「小春は人を待ってるんです、困ります、離して下さい!」

えっ!小春ってあの子がそうなのかな?
麻琴もその事に気がついたようで、同時に走り出しました。

「ちょっとまったぁ!」
「何だお前ら!?」

男達は、突然現れた私達を睨みつけます。
一瞬怯んだ私ですが、ここで負けるわけにもいきません。

「あなた、久住小春ちゃんね?」

小春ちゃんは、小さく頷きました。

「やっぱり・・・あの、この子私達の知り合いなんです、手を離してあげて下さい」
「はぁ?それが何の関係があるってんだよ!」
「大ありじゃん!」

男が再び睨んできますが、麻琴も負けじと言い返します。

「おい、めんどくせぇ、こいつらも連れて行け」

リーダーらしき男の声に、他の数人が頷くと、私達の口にハンカチを当てました。
あれ?・・・・何だか眠くなって・・きた・・・・・あっ・・・・これがクロロホルムってやつか・・・・。
薄れゆく意識の中で、何故か私は冷静にそう思っていたのです。

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