ハロー荘へようこそ!第1話『れいなと美貴と管理人』

イライライライラ

俺はイライラしながら廊下を行ったり来たりしている。

イライライライラ

そんな俺の様子に、一人の住人が声をかけてきた。

「ねぇ少しは落ち着ち付きなって」

彼女の名前は藤本美貴、20歳の大学3年生だ。
気は強く自分が納得出来ない事に関しては、とことん意見を言ってくる。
それが分かってるのに、気が立ってる俺は余計な一言を言ってしまった。

「美貴、お前は黙ってろ!」

やつ当たりだ、それは分かってるが思わず口調が荒くなる。
それに対し美貴は、当然黙るはずもなかった。

「黙れって何よ!」
「黙れって言ったのが聞こえなかったのか!」
「何それ、偉そうに!」

もうお互いに全く引く気は無い。
そもそも、俺が何でこんなにイライラしてるかというと、住人の1人の帰りが遅いから。
その住人の名前は、田中れいな、この春高校に入学したばかりの子だ。
うちの寮では、一応門限があり、その時間は年齢によって違う。
高校生の門限は9時なのだが、時間は既に10時を回っている。
だが、実際はそこまで厳しいわけではない。
ちゃんと連絡さえ入れれば、1~2時間の遅れは大目にみている。
でも今回に至っては、連絡もないばかりか、他の住人のだれもその理由を知らない。
それに俺は、管理人として他所様の娘を預かっている立場もある。

「もう10時回ってるんだぞ!遅すぎる!!」
「何よ!10時くらい、今時普通だっつーの!!」
「何だと!この野郎!!」
「野郎じゃありませ~ん!美貴は女の子で~す!!」
「揚げ足とるんじゃねぇよ!!」
「何よ!!」

睨み合う俺達。

「まあまあ二人とも、ここで喧嘩してても仕方ないじゃない」
「そうだぜ、それに田中だって子供じゃないんだ、そんなに心配する必要ないさ」

エスカレートする俺達の喧嘩を見かねて、二人の住人が仲裁に入ってきた。
1人は石川梨華、美貴と同じ大学の3年生。
そして、もう1人の男っぽい口調なのが、吉澤ひとみ、美貴達より1コ下の大学2年生だ。
同じ時期に入寮してきたこの二人、性格は全くの逆である。

「だってこのバカ管理人がさ!」
「誰がバカだこの野郎!!」
「だから野郎じゃありませ~ん!物覚え悪いんじゃないの?」
「この野・・・、このアホ娘が!!」
「何よ!」
「何だよ!」

また睨み合う俺達。

「はいはい、スト~ップ、下の子達だって見てるんだからさぁ」

梨華は再び喧嘩を止めに入った。
周りを見ると、高校生の子達が不安げな表情を見せている。
その姿を見た俺達は、一気に冷静になった。

「ご、ごめん」
「ごめんなさい」
「私はいいから、お互いに謝って仲直りする!」

梨華に言われ、お互いに向き直おる。

「美貴・・・ごめん、俺が悪かった」
「ううん、私の方こそ、ごめんなさい」
「いや、美貴は悪くないよ」
「うんん、私が悪かったんだよ」
「いや、俺だよ」
「ううん、私だよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「俺だって言ってるんだろうが!」
「わっかんない人ね、私だって言ってるでしょう!」
「わかんないのはお前の方だろ!」
「なによ!」
「なんだよ!」
「「いい加減にしろ!!」」

バシ!!

再び喧嘩を始めた俺達の頭を、梨華とひとみが同時に叩いた。
俺達、なに下らない事で言い合ってるんだよ・・・・。

「ごめん、やっぱり俺って、美貴の言う通りバカ管理人なのかもな・・・」
「あ、あれは、つい勢いで言っちゃただけで、たけ兄は一生懸命頑張ってるじゃない」
「ありがとう、美貴」
「たけ兄・・・」

お互い見つめあい、少し照れくさそうに微笑んだ。
その時・・・

「あのぉ・・・」

寮の入り口のドアが開き、恐る恐る顔を覗かせる人物がいた。

「・・・終わった?」

その人物は、俺と美貴の喧嘩の原因となった張本人、田中れいなだった。

「「れいな!!」」

全員が一斉に声を上げた。

「いやぁ~、ドアの前まできたら怒鳴りあう声が聞こえてさぁ、何があったちゃ?」
「何がって、アンタが原因でしょうが!」

梨華にそう言われ、れいなは『何で?』といった顔をする。

「このバカタレ!その原因すら分からないのか!」
「ちょお!何で怒られなくちゃならないちゃ!れいな何も悪い事しとらん!」
「門限破っておいて、その態度は何だ!遅れる時は連絡しろってあれだけ言ってあるだろ!」

俺の言葉に、今度は『ハァ?』といった顔で、

「したっちゃよ」

と答える。

「パパ達が東京に来てるから、一緒に食事して帰るって」
「なに~!?」
「もしかして、聞いてないと?」
「誰に伝えたんだ?」
「さゆ」

さゆというのは、れいなと同じ学年の、道重さゆみの事だ。
そういえば、今日は姿を見てない。

「さゆみは何処だ?」
「多分部屋で寝てるんじゃないかな?」

そう答えるのは、高校2年の亀井絵里。
その時、眠そうな目を擦りながら、さゆみが現れた。

「あれぇ皆集まってどうしたんですかぁ?あっれいなお帰り」
「さゆ、れいなが遅くなるって伝えてくれなかったと?」
「・・・・・・あぁ、忘れてた」

さゆみは、悪ぶれるでもなく笑顔で答える。
その態度に、梨華は呆れ顔で言う。

「あのねぇアンタのせいで大変だったんだからね」
「そうだよ、おかげで、たけ兄と余計な喧嘩しちゃったじゃないさ」

美貴も勘弁してよ、といった感じで文句を言う。
すると、やっと状況を理解出来たのか、さゆみは後ずさった。
そして、首を僅かに傾げて満面の笑みを見せる。
しかも、さゆみお得意の『うさちゃんピース』付で・・・。

「えへっ」
「えへっ、じゃねえ!」
「ごめんなさ~い!」
「さゆ!逃げるんじゃないと!さゆのせいで怒られたっちゃよ!」
「ねぇ、れいな、さゆみの可愛さに免じて・・・」
「さ~ゆ~」
「許してくれないよね・・・」

そう言って、さゆみは逃げ出し、れいなは追いかける。
その光景は、ちょっとした運動会さながらだった。
俺はというと、そんな元気は残っておらず、壁にもたれ掛かる。

「・・・・何だったんだよ、さっきまでの険悪なムードは」
「いいんじゃね?ウチららしくてさ」

ひとみが俺の横で、腕組みしながら言う。

「まあな」

こうして今日も、ハロー荘の一日は過ぎていくのだった。

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