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zoom RSS ”たった一人のサンタクロース”第5話『やきもちサンタ』

<<   作成日時 : 2009/12/05 23:36   >>

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「いらっしゃいませ!」

コハルを連れ、知り合いがバイトしてるレストランへとやってきた。
ここは全国にチェーン店を出している有名店で、若者や家族連れで賑わっている。

「へー良い感じのお店だね」
「だろ?メニューも豊富で値段も手ごろだから俺もよく利用するんだ」
「あー修介って料理しなさそうだもんね。昨日だって冷蔵庫の中に全然食材なかったし」
「うっ……でも大学生男子の一人暮らしなんて皆そんなもんだぞ?」
「まったく仕方ないなぁ。でもコハルがいる間はちゃんと作ってあげるから安心してね」
「当てにしてるぞ?でもちょっと意外なんだよな」
「何が?」
「いや、コハルって料理が得意なイメージ全く無いから」
「えーひどーい!そういうこと言ってると作るの止めちゃうんだから」
「おいおい、いきなり前言を撤回するのかよ」
「だって修介がコハルを侮辱するんだもん」
「ごめん、悪かったって。そんなにへそを曲げるな」
「いーっだ!」

コハルとそんなやり取りをしてると見知った顔のウエイトレスが注文を取りにやってきた。

「いらっしゃいませ。あー田中くんじゃん」
「よっ!バイトに励んでるかね苦学生」

この子の名前は亀井絵里。
こんなに可愛いのに不思議なことに与田の彼女なのだ。
その不思議さ具合は世界七大ミステリーに数えられるほどなのだ。

「誰が苦学生よ!」
「冗談だよ。絵里ちゃんは苦労知らずのお嬢様だもんな」
「別にお嬢様なんかじゃないよ。至ってふつーの美少女なだけだもん」
「自分で美少女言うか?」
「事実ですから。それよりこの子誰よ?万年独り身の田中くんにもとうとう春が来たかぁ?」
「大きなお世話だ。それにこの子はそんなんじゃなくて……ってコハルどうした?」

気がつくとコハルは絵里ちゃんの顔をじーっと見つめて眉間にシワを寄せている。

「あ、あの私の顔に何か付いてるかな?」
「何やってんだよお前」
「えーっとエリカさんじゃないですよね?」
「へっ?エリカ?ちょっと似てるけど私は絵里だよ。亀井絵里」
「わー!顔だけじゃなくて名前も似てる!」
「何だ知り合いに似た奴でもいるのか?」
「うん、先輩のサンタ……」
「ば、馬鹿!」
「サンタ?」
「あっ!そうじゃなくて、えーっと……サーターアンダーギーが大好物な先輩に似てるんです!」
「へっ?」
(とっさに出た嘘が何故に沖縄の名物……)
「あはははは、おもしろーい。でもにサーターアンダーギーって美味よねぇ♪」
(あっさり信じた……さすが絵里ちゃん)
「ところでそのエリカさんってそんなに私に似てるの?」
「はい!そりゃあもう双子かって言うくらいそっくりなんです。名前はツル・エリカって言うんですけどね」
「つ、つる?鶴と亀で名前には”えり”がつくって確かに似てるな」
「すごいねー。もしかして生き別れの姉妹だったりして」
「えっ?絵里ちゃん姉妹で生き別れになってんの?」
「なってないよ」
「そりゃそうだよな」
「多分」
「多分かよ!」
「あはははははは」

まったくこの子は……疲れる。
せっかく可愛いのに何か変わってるんだよな。

「………修介と仲良いんですね」
「うん、だってお友達だし。あっもしかして何か勘違いしてる?私と田中くんは何でもないから心配しなくて良いよ」
「べ、別に心配なんかしてないですけど……」
「あんまコハルをからかうなよ。それに君も勘違いしてないか?さっきも言ったけど俺達そんなんじゃないんだからな」
「ほんとうぉ?」
「本当だ」
「じゃあそういうことにしといてあげる。でも珍しいよね?田中くんが女の子と二人なんてさ」
「うっせーつーの。そんなことよりちゃんと仕事しろってば」
「あっ忘れてた!」
「忘れるな!サボってるとバイト料さっぴくぞ」
「お前はここの店長かーい!」
「そうです!この店の店長です!……違うか!」
「ものいいか!」
「突っ込まなくて良いから早く注文訊けっての」
「ほーい!では…ほっほん。ご注文はお決まりですか?」

やっと本来のウエイトレスとしての役割を終え、絵里ちゃんは愛想を振りまきその場を立ち去った。
そんな彼女の姿を見送りほっと一息付いた所で、さっきから気になってたことをコハルに訊いてみることにする。

「なぁコハル一つ訊きたいことがあるんだけど……」
「なに」
「……何か怒ってる?」
「別に」
「”別に”ってお前は何処のエリカ様だよ」
「何それ、意味分かんない!」
「………もしかして妬いてるのか?絵里ちゃんと仲良くしてたから」
「ば、ばっかじゃないの?何でコハルが妬かなくちゃならないのよ!」
「ふぅ…じゃあそういうことで良いから。でも本当に彼女とは何でもないんだからな?それにあの子ちゃんと彼氏いるし」
「……そうなの?」
「そうなの。それにお前最初にウチに来た時俺のことを”恋人のいない寂しい人”って言ってただろ。そういうの調べて来てるんだろ?」
「……そうだった!だよね!修介なんかに彼女がいるわけないよね!」
「思いっきり断言されるとムカつくんだが……。しかも”なんか”って何だよ”なんか”ってのは」
「まぁまぁ細かいこと気にしちゃ駄目だってば!そんなんだから彼女出来ないんだよ?」
「………」

初日にも聞いた言葉を、コハルは全く悪びれず言いはなった。
おそらく心の底から本気で悪気は無いんだろうが、それゆえに思いっきり傷付いてしまう。
さすがに泣くぞ?

「ところで訊きたいことってなに?」
「やれやれ、すっかり機嫌直してやがる」
「まぁまぁ。ほら何でも答えちゃうから言ってみ?」
「ふぅ、分かったよ。さっきさ絵里ちゃんそっくりな先輩の話が出ただろ?」
「うん、エリカさんがどうかした?」
「さっき”ツル・エリカ”って言ったけど”ツル”ってのは苗字か?」
「そうだけど?」
「じゃあコハルにも苗字があるんだよな?」
「当たり前じゃん。って言ってなかったっけ?コハルの苗字」
「全然聞いてない」
「そっかー言ってなかったかー」
「で、何ていうの?」
「クスミだよ。クスミ・コハルが私のフルネーム」
「クスミ・コハルかぁ。素敵な名前じゃないか」
「でしょう?ところでコハルも訊きたいことあるんだけど」
「何だ?」
「さっきのエリカ様って誰?コハルの先輩のエリカさんに関係あるの?」
「………全然関係ない」

     ◇

食事を終え、レストランを出た俺達は散歩をすることにした。
その散歩の道中、コハルは俺の腕に自分の腕を回し、寄り添うように歩いた。

「おいどうしたんだ?そんなに甘えてさ」
「んー別にー」
「まったくしょうがないやつだな」

などと余裕を見せてみたものの、正直な気持ちを言えば内心ドキドキしっぱなしだった。
何故なら彼女いない暦=年齢なわけで、ってこのフレーズ使うの何度目だっけ?
とにかく20年間女性に縁の無い人生を歩んできたのだから、こんな風に密着されれば冷静にいられるわけがない。

「やっぱ修介って優しいよね」
「何だ突然?」
「10年前に会った時もそうだった。普通あんな風に声掛けて一緒に遊んでくれないよ」
「そうかなぁ?」
「そうだよ」

自分じゃ特に優しくしてるつもりは無いのだが、昔から異性からそう言われることは多かった。
ただその後に「良い人なんだけど恋愛対象にはならない」とも言われていたが……。
うーむ”良い人”ってのはある意味一番残酷な言葉かもしれない。
俺の人生なんて悲しいんだ……。
そんなことを思っていると不意に声をかけられる。

「おー田中じゃないか」

振り返ってみると、そこには与田が立っていた。

「何だ与田か」
「何だとは失礼なやつだな。せっかくフォロー済みだってのに」
「へっ?」
「あのサンタ服の子のことだよ」
「えっコハル?」
「うぉっ!格好が違うから気付かなかった!っていうかお前らやっぱそんな関係だったのかよ!」
「ち、違う違う、この子はなんていうか友達、っていうか親の知り合いの子供でさ」
「友達と腕組んで歩くか?」
「こ、この子は外国で育ったからスキンシップの仕方が日本とは違うんだよ」
「へーつまり帰国子女ってやつか」
「まぁそんな感じだ」

思わず新しい設定を幾つか追加してしまったが、外国育ちってのはあながち間違ってはいないだろう。
サンタの世界が何処にあるのかは知らないが、日本の外にあるのは確かなんだから。

「初めまして。俺は修介の友達で与田です」
「あっ初めまして。コハルです。今、修介…田中さんの所でお世話になっています」

コハルは余計な事実まで交え丁寧に挨拶をする。

「お世話ってやっぱ同棲してるのか!?」
「ち、違うってば。さっきも言ったろ?親の知り合いの子供だって。実は日本には短期留学って形で来ていて、俺の親父経由でこの子の面倒を見てくれって頼まれてさ」
「じゃああの時のサンタ衣装は?」
「バ、バイトだよ。日本の文化を知るためにバイトもしてるんだ」
「でもサンタの服ってことはクリスマス関連だろ?クリスマスは日本の文化じゃないじゃないか」
「細かいこと気にするなよ。それに既に日本でクリスマスは定着しちゃってるだろ」
「まぁ今時の子供はクリスマスが外国のお祭りだってことを知らないかもな」
「だろ?」

うーむ、我ながらよく次々と嘘が出てくるものだ。
そんな嘘を横で聞いてるコハルは笑いを堪えるのに必死になっている。
自分のことなんだから少しは助け舟を出してくれても良いだろうに……。

「ところでさっきフォロー済みって言ってたけど何のことだ?」
「だからこの子のことだよ。お前変態扱いされてたろ?だからこの子のことテキトーに誤魔化しといたから」
「そっかサンキュー。でも大学の連中本当に素直に納得してくれたのか?」
「まぁ百パーじゃないかもしれないけど問題無いだろ。人の噂も四十九日って言うし」
「それを言うなら七十五日だろ。四十九日じゃ中陰法要だ。大学生が静岡を舞台にした少女漫画の主人公と同じ間違いをするなよ」
「回りくどい突っ込みだな」
「あっそうそう、さっき絵里ちゃんのバイトしてるレストランに行ってきたんだぜ」
「ちゃんとバイトしてたか?」
「半分くらい自分の役割を忘れて俺たちとくっちゃべってたよ」
「アイツらしいな」
「亀井さんの知り合いなんですか?」
「あぁコイツが噂の絵里ちゃんの彼氏だよ。不思議なことに」
「へーそうなんだぁ」
「不思議って何だよ。誰がどう見てもお似合いのラブラブカップルだろう」

そう言うと与田は何故か自慢げな顔を見せる。
コイツとは高校からの付き合いだが、こういう所は未だに理解出来ない。

「お前に付き合っていたら疲れるから帰るわ」
「じゃあ俺は絵里に会いに行ってこよーっと」
「絵里ちゃんの仕事の邪魔するんじゃないぞー」
「待ってろよー絵里ー!君の愛しのダーリンが今行くからねー!」
「……聞いてねーし」
「か、変わった人だね」
「お前もそう思うか。アイツ変な奴なんだよ。まあ悪い奴ではないんだけどな」
「うん、それもよく分かる」

与田と別れた俺達は一日ぶりに俺の住むアパートの部屋へ戻ってきた。
たった一日なのに、凄く久しぶりな気がする。
ほっと一息をついて気付いたのだが、与田が俺の鞄を預かってることをすっかり忘れていた。
まあ中には大したものが入っていないし問題は無いので明日学校で返してもらえば済むけど。

「んーやっぱ狭くて汚くても自分の部屋は落ち着くなあ」
「そうだねー。コハルもやっと羽を伸ばせるよ」
「ここはお前の部屋じゃないだろ。っていうかコハルがこの部屋に居た時間って一日も無いじゃないか」
「住めば都って言うじゃん」
「使い方間違ってるし、改めて言うけどお前はこの部屋で一日も過ごしてないだろっての」
「ほーんと修介って細かいよねー」
「お前が適当過ぎるんだ」
「えー普通だよー」
「…まあ良いか。何か一々突っ込み入れるのも疲れてきた……」
「そうそう、男ならどーんと構えていてもらわなくちゃ」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はーい」

こうしてコハルとの生活が再び始まった。
クリスマスまであと12日。
つまりコハルを過ごせる日々も12日だけだ。
この残された日々を、俺は思いっきり楽しもうと思った。
だが、すぐそこに新たな問題が迫ってきてることを、この時の俺は気付いていなかった。

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